こんにちは!
気ままな読書を楽しんでいるあびあびです。 今回は、濃密で歪な様々な愛の形
『スモールワールズ』
を読んだので、ネタバレなしで感想をまとめます!
『スモールワールズ』あらすじ
誰の人生だって、激動だよなあ。
スモールワールズ「式日」
ミニチュア作品を思わせるタイトルと装丁に惹かれて手に取った『スモールワールズ』。実際はミニチュアとは関係のない、6つの短編からなる濃密な人間ドラマでした。どの作品も、日常の中に潜む静かな激動を丁寧に描いています。
特に心を打たれたのは「ピクニック」という短編。
赤ちゃんの祖母・希和子は、赤ちゃんのためなら命も惜しくないと語る優しい人物。育児に苦しむ母・瑛里子は、希和子に助けられながら子育てを続けます。
ある日、瑛里子は息抜きのために単身赴任中の夫の元へ出かけます。ところがその留守中、赤ちゃんが動かなくなったとの連絡が。警察の介入により、家族は疑念の目を向けられ、平穏だったはずの生活が一変。そして過去に封印してきた秘密が、少しずつ明るみに出ていく――。
この短編を含む6つの物語には、それぞれ異なる人物たちが登場しますが、物語が交差するような仕掛けもあり、読み進めるごとに世界が広がっていくのも魅力のひとつです。
『スモールワールズ』読後レビュー(ネタバレなし)
心に刺さるやさしい言葉と切なさ
文章は柔らかく、静かに進んでいきますが、読み手の心にはチクリと刺さる言葉が散りばめられています。育児の辛さ、伝わらない想い、思い込みや先入観によるすれ違い。そうした「ままならなさ」が、日常の風景の中で自然に描かれています。
疑ってるなんて言ってないのに、どうして「信じて」って言うの。
スモールワールズ「ピクニック」
そんな台詞が示すように、言葉と気持ちがズレてしまう切なさが随所に感じられ、登場人物たちの葛藤に引き込まれました。
圧巻のラスト3ページ
特に「ピクニック」のラスト3ページは圧巻。あまりの衝撃と余韻に、読み終えてしばらくぼーっとしてしまうほどです。
それぞれの気持ちを考えると、今でも引きずるような余韻が残ります。
他の短編も満足度高し
「ネオンテトラ」や「愛の適量」などの他の短編も、それぞれが印象的で満足度の高い一編ばかり。不器用で、どこか空回りしてしまう人たちの姿に、共感と苦しさと、時に優しさを感じました。
こんな人におすすめ!
✔️ 人間ドラマや日常の中の感情の機微を丁寧に描いた作品が好きな方
✔️ 短編小説を一つずつじっくり味わいたい方
✔️ 読後に余韻のある作品を求めている方
✔️ 繊細な心理描写を好む方
まとめ
皮肉っぽいユーモアや、やるせなさがじんわりと胸に染みる短編集でした。どの作品も満腹感があり、一息つきながら読み進めるのがおすすめです。感情を揺さぶられたい人にはぴったりの一冊です。
それを読むわたしのテンションがまったく上がらないことにはお構いなし、そういう一方的なツールなのだと分かっていてもため息がこぼれた。
スモールワールズ「ネオンテトラ」