こんにちは!
気ままな読書を楽しんでいるあびあびです。
青崎有吾さんは『地雷グリコ』が面白過ぎて、昔の作品も読もうと思いました!

今回は、校内密室殺人とアニメオタク探偵の論理戦
『体育館の殺人』
を読んだので、ネタバレなしで感想をまとめます!
『体育館の殺人』あらすじ
風ヶ丘高校の旧体育館で、放送部部長の少年が刺殺された。
死体が発見されたのは、緞帳に遮られたステージ上。ステージの出入口はすべて鍵がかかっており、まさに「密室」状態だった。
犯行時刻は放課直後。激しい雨の中、現場にいたのは女子卓球部の部長ただ一人。警察は彼女を容疑者と見なし、事件は単純な構図に思えた。
しかし、真犯人は本当に彼女なのか?
卓球部員の柚乃は、部長の疑いを晴らすため、校内でひっそり暮らしている謎の天才少年・裏染天馬に真相の解明を依頼する。
彼はアニメオタクで、金とアニメグッズのためなら探偵もやるという、ひと癖もふた癖もある存在だった――。
『体育館の殺人』読後レビュー(ネタバレなし)
ガチガチの論理で攻める「密室殺人」
事件の起きた旧体育館は、出入り口が施錠された密室状態。しかも天候は大雨。
犯行可能なのは、早めに授業を終えて体育館にいた人物だけ……という完璧に見えるシチュエーション。
しかしそこからの展開は、アリバイ調査、目撃証言、謎の参考人の登場と、まさに王道本格ミステリの流れ。
探偵役の裏染天馬が推理を組み立てていく過程は、読者にも「考える楽しさ」を与えてくれます。
探偵役が“ダメ人間アニメオタク”という意外性
探偵役の裏染天馬は、いわゆる「名探偵」らしからぬ存在。
部室に隠れて生活し、アニメと漫画に命を懸けている変人オタクです。
でも、その推理力は天才的。事件の本質を見抜き、警察すらも手玉に取る姿は痛快で、癖のあるキャラがむしろ作品の魅力になっています。
彼の口から飛び出すアニメ・漫画のたとえ話もユニークで、柚乃と同じく「えっ?」となりつつも、どこか笑えてしまう掛け合いが楽しい。
「読者への挑戦状」あり!ガチ勢も納得の本格構成
本作では、推理パートの前に「読者への挑戦状」が登場します。
ここまでで全ての情報が出揃いました――というあの宣言。まさに古き良き本格ミステリのスタイル。
そしてその「出揃ったヒント」が、まさかのキー情報になる展開には脱帽。
フェアなのに気づけない。情報はきちんと出されているのに見落としてしまう。
「そういうことか! やられた!」と唸らされました。
章タイトルのわかりやすユニークさも笑った
本作の章タイトルは非常にシンプルかつ教科書か!という丁寧さ。
- 第一章は事件とともに始まる
- 第二章において探偵役が登場する
- 第三章は容疑者絞りに費やされる
- 第四章の末尾で全てのヒントが出そろう
- 第五章は解決編である
という具合で、読者は今どんな段階にいるのかを明確に把握しながら読めます。明確過ぎ。
物語のテンポ感もよく、サクサク読める構成です。
こんな人におすすめ!
✔️ 密室殺人やアリバイ崩し系の本格ミステリが好きな人
✔️ 「読者への挑戦状」があるようなクラシカルな構成が好みの人
✔️ 学園ミステリーを気軽に読みたい人
✔️ アニメや漫画ネタにクスっとできる人
まとめ
青崎有吾さんによる本作は、まさに「ザ・定番」な学園ミステリ。
しかし、王道の中にアニメオタク探偵という斬新さや、緻密な論理構成、テンポの良い語り口が組み合わさり、本格ミステリにあまり馴染みがない人でも読みやすく、ミステリ最初の一冊としてもおすすめ。
校内に潜む天才が、密室の謎をどう解き明かすのか――
その鮮やかな一手を、ぜひあなたの目で見届けてください。