こんにちは!
気ままな読書を楽しんでいるあびあびです。
須藤古都離さんは『ゴリラ裁判の日』が面白かったので、今作も迷わず手に取りました!

今回は、壮大なすれ違いがカオスを巻き起こす
『ゾンビがいた季節』
を読んだので、ネタバレなしで感想をまとめます!
『ゾンビがいた季節』あらすじ
舞台は1960年代後半のアメリカ・ネバダ州の田舎町ジェスロー。かつてヒット作を出すも、現在はスランプ中の小説家トムは、ギャンブルに逃げる日々を送っていた。
そんなトムの前に、旧知の出版エージェント・ダンの部下であるケイティが現れる。訪問の目的がつかめない中、突如として町が異変に包まれる。人々がゾンビのように変貌し、内臓をむさぼり食う惨状が広がる。
だがそれは、トムの妻・メグとダンによる、彼を再び執筆の道に引き戻すための“偽のゾンビ襲来”計画だった。町の住人たちも協力し、ついでにゾンビ映画も撮影しようと、映画監督エリックを呼び寄せて撮影が始まる。
だが、ただのイタズラや演出で終わるはずだった“ゾンビごっこ”は、やがて本物の混乱とカオスを巻き起こし、思いもよらぬ展開へと突入していく――。
『ゾンビがいた季節』読後レビュー(ネタバレなし)
第一部は情報量が多いが、それを乗り越えると物語が動き出す
本作は大きく「第一部:撮影前」と「第二部:撮影開始」に分かれています。
第一部は、登場人物の紹介やジェスローという町の描写に多くのページが割かれ、さらに映画監督・マフィア・殺し屋・警察・秘密組織・予言書…と、情報がかなり多め。最初は「何の話なの?」と戸惑いました。
ですが、この“伏線だらけの混沌”こそが、第二部で一気に活きてくる設計になっているのが秀逸。あらゆる人物・思惑が交錯しながら物語が暴走していく後半の展開は、まさに“怒涛”です。
キャラクターの個性とすれ違いの妙が魅力!
本作の最大の魅力は、キャラが全員「本気で自分の役割を果たしている」こと。
ジェスローの変人たち、業界から見放された映画監督エリック、マフィアに仕える冷酷な殺し屋、予言を信じる秘密組織の男たち…。
どの人物も「自分の価値観」でまっすぐ行動しているのに、それがズレてすれ違い、物語が想定外の方向へ転がっていく。
シリアスに行動している彼らの様子が、第三者の目から見ると滑稽でコメディに映る。
まさに、チャップリンの名言「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見ると喜劇だ」を体現したような作品です。
これはゾンビ小説じゃない、“人間ドラマ”だ
「ゾンビが登場する話(?)」ですが、ジャンルはホラーでもサスペンスでもありません。
ゾンビ襲来という“ドッキリ”を通じて、キャラクターたちが変化し、希望を見出していく様子が印象的。
滑稽で、壮大で、でも最後は温かい。
笑えるのに、ちょっと泣ける。
バカバカしいのに、深い。
そんな不思議な魅力にあふれた、唯一無二の物語です。
こんな人におすすめ!
✔️ コメディとシリアスが混ざったカオス展開が好きな人
✔️ “伏線回収”や“タイトル回収”で「おぉ…!」となるのが好きな人
✔️ 多彩なキャラクターが織りなす群像劇にワクワクしたい人
あらすじ紹介ショート動画はこちら!
まとめ
小さな町の“いたずら”が、人々を動かし、運命を変え、最後には光をもたらす――
後半の疾走感が爽快で、気持ちのいい読後感を味わえる一冊でした!