こんにちは!
気ままな読書を楽しんでいるあびあびです。 今回は、シナリオ通りには進まない、意表を突かれる物語
『その殺人、本格ミステリに仕立てます。』
を読んだので、ネタバレなしで感想をまとめます!
『その殺人、本格ミステリに仕立てます。』あらすじ
「館」シリーズ全十作で知られる人気ミステリ作家の一家に、音更風゛(おとふけ・ぶう)はメイドとして就職する。だが一族はみな不仲で、次期当主を巡って兄妹の間に殺人計画が持ち上がっていた。
風゛は、殺人のシナリオを提供している謎の人物・豺(やまいぬ)と接触し、実際の殺人を止めるため、ターゲットを密かに逃がす“新・殺人計画”を考案。依頼者には殺人が成功したと思わせる、という機転の利いた策を講じる。
しかし犯行当日、計画は大きく狂い、本来のターゲットとは別の人物が殺されてしまう…。
本作は、本格ミステリの「王道」を逆手にとった、超本格×変化球ミステリ!
『その殺人、本格ミステリに仕立てます。』読後レビュー(ネタバレなし)
タイトルと装丁からは想像できなかった“ガチ本格”
「アリバイ崩し承ります」のようなタイトルにまず惹かれ、浅野いにおさんの装丁に惹かれて読み始めた本書。
しかし、予想を遥かに超える“本格ミステリ”だった。
こんなことは、本格ミステリではありえない。極めて怪しい部外者の登場に、流鏑馬は唖然とする。
その殺人、本格ミステリに仕立てます。
最初は「本格ミステリ」が振りの面白さかと思ってましたが…
伏線の張り方、館モノ、クローズドサークル…と、本格ミステリの文脈を理解しているからこその技巧が光っている。
登場人物と掛け合いの魅力
豺と風゛のやりとりは、緊迫した状況の中でも漫才のようなテンポが心地よく、重いテーマを読みやすくしてくれていました。
とくに主人公・風゛のキャラクター造形が秀逸で、おっちょこちょいで憎めない性格ながら、物語の進行と共に成長していく姿が読者の共感を呼びそう。
本格だけど、人間味がある
単なるトリックだけではなく、「実際の殺人は愉快ではなく痛ましい」というメッセージを含んでいて、ミステリの枠を超えた人間ドラマとしても優れていました!
事件の裏にある感情や動機が丁寧に描かれ、読後感にも深みがある。
終盤の伏線回収とどんでん返し
終盤にかけて、これまでの伏線がどんどん回収されていく快感。
真相が明かされていく過程の中で、“本格ミステリに仕立ててくれてありがとう”と言いたくなるような構成力。まさに物語そのものがひとつの謎解きだった。
こんな人におすすめ!
✔️ 本格ミステリを愛する人
✔️ 「館」「クローズドサークル」「見取り図」などのキーワードに惹かれる人
✔️ 推理×成長ドラマが好きな人
✔️ 伏線の回収とどんでん返しを味わいたい人
本格ミステリに仕立ててくれて、ありがとう。
その殺人、本格ミステリに仕立てます。
あらすじ紹介ショート動画はこちら!
まとめ
『その殺人、本格ミステリに仕立てます。』は、一見ポップな装丁とユニークな設定の裏に、重厚で緻密な本格ミステリの真髄が詰まった一冊でした。物語としての面白さと、ミステリとしての完成度、そのどちらも高いレベルで成立しています。
ミステリ初心者にも手に取りやすく、それでいてマニアも唸らせる構成。読み終えた後は、「これは“物語でしかできないトリック”だったのかもしれない」と気づかされる、そんな一冊でした。
