『楽園』感想・レビュー|脱出する条件は「殺人犯になること」

夕木 春央 先生
『楽園』感想・レビュー|脱出する条件は「殺人犯になること」
作品の魅力を伝えるため、作品内容に関する記述を含みます。未読の方はご注意ください。

こんにちは!

気ままな読書を楽しんでいるあびあびです。

今回は、殺人犯にならなければ脱出できない

『楽園』を読んだので、感想をまとめます!

『楽園』あらすじ

両親から引き継いだ不動産に住む老人が、謎のメッセージと山奥の住所を残し、行方不明になった。

その住所が自身の管理する物件だったことから、康之は彼女の沙織とともに現地へ向かう。

そこにあったのは、鍵のかかった金網の門。

その奥には、古びた家屋と手入れの行き届いた畑が広がっていた。

おそるおそる中を訪ねると、不意をつかれ、二人は捕らえられてしまう。

そして、自分たちを拘束した住人たちの正体を知る。

彼らは全員、指名手配犯だった。

『楽園』読後レビュー

斬新なクローズドサークル

クローズドサークルのミステリーといえば、島や館、ペンションなど、ある一定の範囲から出られなくなった状況で殺人が起こる。

犯人が分からない。

次は自分が殺されるかもしれない。

早くここから脱出したい!

そんな追い詰められた状況にドキドキするミステリーですが、この作品は違います。

脱出する条件は「殺人犯になること」。

脱出する条件は明確で、誰かに追われているわけでもない。

むしろ自分たちが「誰を殺すのか」を考える側なので、通常のクローズドサークルとは違った恐怖があります。

脱出はしたい。

でも、殺人なんてできない。

『楽園』に来て四日。僕が思い知ったのは、ここの住人が紛れもなく人間だということだった。

『楽園』

徐々に住人たちの人柄も分かっていくなかで、心はどんどん追い詰められていきます。

リアルに自分が同じ状況に置かれたところを想像すると、胸がグッとつまり、鼓動が速くなる……。

そんな心地の悪いドキドキ感でした。

謎、悩み事、考え事がどんどん増える

殺人犯にならずに脱出する方法はないか?

仮に殺人をするなら、誰を、どう、殺したらいいのか?

など脱出するためにどうしようか、という状況で普通に殺人が起こります。

自分が追う側だったのに、いきなり追われることも想定しないとだめなの? ってなります…

この事件の犯人は彼女かもしれない? となってから

どうして? どうやって? に始まり、

なぜ自分に教えてくれない? 裏切られる? 捨てられる?

というような謎と不安にどんどん飲まれていく康之。

こんな極限状態で、一番信頼していた人まで信じられなくなったら……これは心が持たない。

選択

このシリーズの『方舟』『十戒』でも、「あのとき別の選択をしていたら」と、違う結末に思いを馳せる余地がありました。

今作でも違う道へのヒントがあります。

どの道がハッピーエンドで、バッドエンドなのかは視点によって違いますが、今回もク―――ッと、いろいろ考えてしまう道が用意されていました。

P306のある一文がエグかったです。

こんな人におすすめ!

  • クローズドサークルミステリーが好きな人
  • 『方舟』『十戒』を読んだ人
  • 胸が抉られる体験を求める人

まとめ

正直に言いますと、『方舟』『十戒』と読んできているので、最初から「あの人、怪しいな……」とかなり疑いながら読んでいました。

それでも、「そうくるか!」という展開に、食い入るように読んでしまいました!

やっぱり面白いなぁ。すごいなぁ。

今回も「選択」が重要になっていて、「もし違う選択をしていたら」と別の道に思いを馳せたくなる。

読み終わったあとも、あの選択はどうだったのか、別の道はなかったのかと考えてしまう。

そんな余韻も含めて好きな作品でした。

楽園

夕木 春央

※価格や在庫は各ショップをご確認ください。

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