『少女マクベス』感想・レビュー|奈落へ消えた天才。残された言葉は魔女。

降田 天 先生
『少女マクベス』感想・レビュー|奈落へ消えた天才。残された言葉は魔女。
作品の魅力を伝えるため、作品内容に関する記述を含みます。未読の方はご注意ください。

こんにちは!

気ままな読書を楽しんでいるあびあびです。

今回は、演劇学校で起きた天才の死『少女マクベス』

を読んだので、感想をまとめます!

『少女マクベス』あらすじ

演劇に携わる人材を育成する名門校「百花演劇学校」。

昨年度、天才と称された設楽了は、自身が手がける「百獣のマクベス」の公演中に命を落とした。

事故として処理されたその死の真相を明らかにするため、百花演劇学校へ入学した藤代貴水。彼女は、了の演出補佐を務めていた結城さやかを巻き込み、了が死の直前に口にした「魔女」の正体を追い始める。

了の死に隠された真相とは。 そして、「魔女」とはいったい誰なのか――。

『少女マクベス』読後レビュー

異なる視点で描かれる過去

貴水とさやかが疑わしい生徒たちの秘密を調べていく中で、設楽了が亡くなるまでの出来事が、それぞれの生徒の視点から語られていきます。

同じ人物、同じ出来事でも、誰の視点から見るかによって感じ方や見え方が違う。そのたびに、それまで抱いていた印象が少しずつ変わっていくのが面白かったです!

天才と呼ばれていた了は、本当は何を考えていたのか。 彼女が残した「魔女」という言葉は何を意味しているのか。 過去が明らかになるほど新たな疑問が生まれ、どんどん物語に引き込まれていきました。

さらに、過去の了の死を追う一方で、現在ではさやかのもとに脅迫文が届きます。 過去の死と現在の脅迫。 二つがどうつながっていくのかも気になり、ページをめくる手が止まりませんでした!

秘密を知るたび、物語の見え方が変わる

本作で特に面白かったのが、生徒たちの秘密が明らかになるたびに、物語の見え方まで変わっていくところです。

秘密が語られる場面では、その生徒の一人称となり、どんな過去や境遇を生きてきたのか、そのとき何を感じていたのかが描かれます。 それを知ると、その人物への理解が一気に深まる。

「あのとき、こんな気持ちだったのか」 「だから、あの場面であんな行動をしたのか」

それまで何気なく読んでいた場面まで、少し違って見えてくるのが面白かったです!

人には見せたくない秘密だからこそ、そこにはその人の価値観や弱さ、願いといった、その人を形作るものが強く表れるのかもしれません。

生徒たちの秘密を知り、一人ひとりのことが分かっていく。それと同時に百花演劇学校という場所のことも分かっていき、ミステリの謎だけではない部分でも、どんどん物語に入り込んでいきました。

人を知ると、同じ景色でも見え方が変わる。 そんな面白さを感じました。

天才と凡人

設楽了は、生徒たちから「天才」として崇められる一方、恐れられる存在でもありました。

天才と凡人。

才能が強く求められる芸術系の名門校だからこそ、その差を否応なく見せつけられるのだろうなと思います。

青春ミステリでは、学校生活や人間関係など、どこか「昔の自分もこんなことで悩んでいたな」と思えるテーマが描かれることも多いです。 でも本作で描かれる才能への嫉妬や劣等感、自分には何ができるのかという葛藤は、学生だけのものではないように感じました。

自分より圧倒的に優れた人を目の前にしたとき、どう向き合うのか。 それは大人になっても感じることなのかもしれません。

そんな「天才」の存在に生徒たちが翻弄される中、真正面から立ち向かっていくさやかの姿が印象的でした。 真面目で、頑固で、ひたむき。 その不器用なまでの真っ直ぐさが、すごく若々しくて、それでいて格好よかったです!

こんな人におすすめ!

  • 青春・学園ミステリが好きな人
  • 演劇や『マクベス』を題材にした物語に惹かれる人
  • 「天才と凡人」「才能と嫉妬」といったテーマに惹かれる人

まとめ

最初から情景が浮かびやすく、最後まで夢中になって読めました。

設楽了の死の真相を追うミステリとしての面白さはもちろん、生徒たちの秘密を知るたびにキャラクターへの理解が深まり、物語そのものの見え方まで変わっていくのがとても面白かったです。

そして、天才と凡人、才能への嫉妬や劣等感、それでも自分の道を進もうとする少女たち。 最後に探し続けていた人物の正体が明らかになる場面は衝撃的で、ドキドキしながら読みました。

事件の真相だけではなく、そこに関わる人たちの感情や成長まで楽しめる。 読み終えて、「青春ミステリっていいなぁ」と改めて思えた一冊でした!

少女マクベス

降田 天

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