『クローズドサスペンスヘブン』感想・レビュー|もう死ねない世界で、死の真相を追いかける。

五条 紀夫 先生
『クローズドサスペンスヘブン』感想・レビュー|もう死ねない世界で、死の真相を追いかける。
作品の魅力を伝えるため、作品内容に関する記述を含みます。未読の方はご注意ください。

こんにちは!

気ままな読書を楽しんでいるあびあびです。

今回は、もう死ねない世界でのミステリ

『クローズドサスペンスヘブン』を読んだので、感想をまとめます!

『クローズドサスペンスヘブン』あらすじ

喉を切断され、気が付くとそこは、美しいビーチと洋館が佇む天国だった。

天国にいる者たちは全員、同じ事件によって死んだ者たち。 彼らに生前の記憶はないが、毎日送られてくる新聞によって、自分たちの身に起きた事件の概要を少しずつ知っていく。

この中に犯人がいる。

成仏するために、彼らは天国から現世で起きた事件の真相を明らかにすることができるのか。

『クローズドサスペンスヘブン』読後レビュー

天国という特殊設定

閉ざされた天国へようこそ

『クローズドサスペンスヘブン』

事件で死んだ人たちが、自分たちの死の真相を解き明かしていくミステリ。 この特殊設定がまず面白かったです。

ただ、天国でのルールが最初からすべて開示されているわけではありません。 何かが起こったときや、違和感を覚えた点を調べながら、登場人物たちは探り探りでこの世界の仕組みを解明していきます。

天国に行き着いた順番に意味はあるのか。 毎日届く新聞は何なのか。 バイクはどこから来ているのか。

そうしたルールが解明されるほど、事件のヒントとなる事柄も増えていきます。 さらに、そこから記憶が蘇ることで、現世で起きた事件の輪郭が少しずつ明らかになっていく。

直接事件を調べるのではなく、この特殊な天国のルールを探ることで真相に迫っていくところが、本作ならではの読みどころでした。

全員が仲良しなクローズドミステリ

天国にいる人物たちは癖があり、個性豊かです。 けれど、みんな基本的にいい人なのが、クローズド系の作品としては少し違う読み味だったように感じました。

犯人はこの中にいるはずなのに、記憶がないこともあってか、みんなで海で遊んだり、ルール解明のために実験をしたり、推理を茶化したりする。 そんな和気あいあいとした雰囲気が良かったです。

すでに全員死んでいて、もう死ねない世界だからこそ、迫りくる恐怖や次の犠牲者が出るような緊張感はありません。 そのぶん、普通のクローズドサークルとは違う、新鮮な空気がありました。

天国の終わりまで描かれる読後感

事件の解明後、全員が成仏していくシーンも印象的でした。 事件を解決して終わりではない。 全員が成仏して終わる。

普通の物語なら、事件が終わったあとも、その世界は描かれていないだけで続いていくのだと思います。 しかし本作の天国は、この事件の真相を追求するために設けられた場所です。だから全員が成仏すると同時に、この世界も役目を終える。

読み終わりと同時に、この天国という世界も終わる。 その読後感があまりない感覚で、じわっと心に沁みました。

こんな人におすすめ!

  • 特殊設定ミステリが好きな人
  • 新しい読み味の物語を読みたい人
  • クローズドサークルものが好きな人

まとめ

私は、真相を解き明かす前のセリフが好きでした。

みんな揃って成仏しない、そんな選択肢もあるんじゃないかって思ったんです

『クローズドサスペンスヘブン』

普通のミステリなら、犯人を見つけなければ次の犠牲者が生まれるかもしれない。だから一刻も早い解決を望みます。

でも本作では、全員がすでに死んでいます。犯人を突き止めたところで、待っているのは成仏です。 それなら、真相を明らかにするよりも、この天国で満たされた楽しい生活を送り続けるのはどうですか? そう問いかけるような場面で、それも一つの解決なのではないかと思いました。 そういう終わり方もあり得ると感じさせてくれるところが、とても印象に残っています。

事件の真相を追う面白さだけでなく、この天国で過ごす時間そのものの愛おしさもある作品でした。

クローズドサスペンスヘブン

五条 紀夫

※価格や在庫は各ショップをご確認ください。

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