『リカバリー・カバヒコ』感想・レビュー|心を回復させる優しい物語

青山 美智子 先生
『リカバリー・カバヒコ』感想・レビュー|心を回復させる優しい物語
作品の魅力を伝えるため、作品内容に関する記述を含みます。未読の方はご注意ください。

こんにちは!

気ままな読書を楽しんでいるあびあびです。

今回は、リカバリーするカバの遊具

『リカバリー・カバヒコ』を読んだので、感想をまとめます!

『リカバリー・カバヒコ』あらすじ

日の出公園に昔から置かれている、カバの遊具。 塗装が剥がれ、黒色の目はどこかうるんだ瞳のように見えるそのカバには、「自分の体で治したい部分と同じところを触ると、回復する」という噂があり、いつしか「リカバリー・カバヒコ」と呼ばれるようになった。

そんなカバヒコのある公園の近くに建つ新築マンション「アドヴァンスヒル」には、年齢も性別も異なる住人たちが暮らしている。

仕事、家族、友人、学校――。 それぞれに悩みを抱えた住人たちは、カバヒコに引かれるように日の出公園へとやってくる。

カバヒコに触れた彼らは、自分自身と向き合う中で、少しずつ変化していく。 5人の住人たちの「回復」を描いた、連作短編集。

『リカバリー・カバヒコ』読後レビュー

物語にすぐに入り込めました!

文章が読みやすく、登場人物たちが抱える悩みも日常的で想像しやすい。 だからこそ、物語にすぐに入り込むことができました。

5人の登場人物による連作短編集で、性別も年代もばらばら。 それでも、それぞれの悩みに触れるたびに、いっしょに心が痛くなったり、パーッと視界が広がったり。 5つの物語を通して、自分の心もたくさん動かされました。

読み終えたあとは、ほっこりとした優しい気持ちになれる作品です。

カバヒコがいとおしくなる

それぞれの短編でカバヒコが登場するたびに、どんどんカバヒコのことがいとおしくなっていきました。 表紙に描かれたカバヒコのイラストも可愛らしく、物語を読んでいるあいだは、何度もその姿を想像してしまいます。

ファンタジー作品ではないので、カバヒコが魔法のような力で何かをしてくれるわけではありません。

ただ、そこにいる。

それだけなのに、悩みを抱えて心が詰まってしまった登場人物たちを、そっと和らげてくれる存在になっています。

塗装が剥がれ、うるんだ瞳をしたカバの遊具。 そんな少し古びた姿だからこそ、余計に愛らしく感じました。

回復とは前の自分に戻ることじゃない

悩み、苦しんでいる登場人物たち。 そんな彼らがカバヒコを通して、ふとしたことに気づきます。

そして、その気づきをきっかけに、自分自身の心や生き方を見つめ直していく。 この作品を読んで印象に残ったのが、

「回復したあと、前とは違う自分になっているんだよ」

『リカバリー・カバヒコ』

という言葉です。 「回復」というと、傷つく前の状態に戻ることを想像してしまいます。

でも、この物語で描かれる回復は、ただ元の自分に戻ることではない。 悩んだり、傷ついたりした経験があったからこそ、新しい気づきを得て、以前とは少し違う自分になっていく。

登場人物たちは、カバヒコを通して「リカバリー」したあと、それぞれの悩みと向き合う前とは違う姿を見せてくれます。 悩みそのものがなくなるわけではなくても、その経験によって自分の心の在り方を見つめ直す。 そんな登場人物たちの姿には、自分自身の生活にも活かせるものがあるように感じました。

こんな人におすすめ!

  • 優しい気持ちになれる物語を読みたい人
  • 新しい環境で少し疲れている人
  • 表紙のカバヒコに惹かれた人

まとめ

登場人物たちは、みんな優しい心を持っています。 でも、だからこそ周りの人を気にしすぎたり、自分を責めてしまったりして、少し生きづらさを感じているようにも見えました。

そんな彼らがカバヒコを通して自分自身と向き合い、少しずつ前に進んでいく。 それぞれの物語には、さまざまな気づきがあります。 その気づきを自分の生活にも少し取り入れることができたら、今まで見えていなかったものが見えて、ふっと視界が開けることもあるのかもしれません。

悩んだとき、無理に元の自分に戻ろうとするのではなく、その経験を経たからこそなれる自分になっていく。 そんな「回復」の形を優しく描いてくれる作品でした。

近くの公園に、カバヒコがいてほしいです。

リカバリー・カバヒコ

青山 美智子

※価格や在庫は各ショップをご確認ください。

おすすめ記事